やまなしイノベーション創出事業に採択も
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ベータグルカン製品「ニューリフィックス neu REFIX ®」を投与したデュシェンヌ型筋ジストロフィー疾患のモデルマウス(mdxマウス)において、病気の進行とともに増加する筋肉疲労が軽減されたことがわかりました。インドと日本の研究者が共同で実施した動物試験で明らかになったもので、2024年3月3日~6日に米国フロリダ州で開催された筋ジストロフィー学会「Muscular Dystrophy Association MDA Clinical and Scientific Conference 2024」で発表されました〔*1〕。
この試験では、mdxマウスを、ニューリフィックスを摂取する群としない群に分け、前肢の筋力テストを行い比較しました。摂取した群は摂取しなかった群と比べて、41日目及び45日目の筋肉疲労が有意に少なくなったことが確認されました。研究は国立精神・神経医療研究センター(NCNP)の青木吉嗣医師のチームと共同で行われ、臨床試験の担当であるジャイケア病院(インド・タミルナド州)のラガバン小児科医は、「この結果は、病気の進行を遅らせるという、先に行われた臨床試験結果〔*2〕に付加価値を与えるものだ」と述べています。
デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、ジストロフィンと呼ばれるタンパク質が欠乏し、筋肉の損傷や変性を引き起こす稀な遺伝病です。損傷や変性が起こった筋肉細胞の減少や再生のサイクルにはさまざまなマクロファージ(免疫細胞)が関わっており、細胞周辺の環境は非常に複雑であると考えられています。
ニューリフィックスの摂取により、筋肉の線維化が防げるということが明らかになったmdxマウスの動物試験を受け〔*3〕、続いて高知大学の坂本修士教授と共同で行われた試験〔*4〕では、mdxマウスの骨格筋を採取して免疫組織化学的に評価を行いました。ニューリフィックスを摂取した群の方が、CD68マクロファージが増加していることが確認され、損傷した筋肉がよりよく除去される可能性が示されました。ジーエヌコーポレーションでは、さらなるバイオマーカーの検証を行うために、九州保健福祉大学の池脇信直教授と共同で研究を進めています。
ニューリフィックスに関しては、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの患者を対象に、6ヵ月間の臨床試験も実施されています〔*6〕。患者を、標準治療薬とともにニューリフィックスを摂取する群としない群に分け、歩行テスト(6MWT)と筋力テスト(MRC)を実施したところ、摂取した群でそれぞれ緩やかな改善が確認されました。
筋力の改善度に統計的有意差は認められませんでしたが、デュシェンヌ型筋ジストロフィーでは、一定時間内に歩行できる距離が減少し、評価される筋力が低下していくのが一般的であることから、ラガバン医師は「この結果は、ニューリフィックスを摂取した患者において、病気の進行が止まる、あるいは止まっていることを示している」とコメントしています。また、「ニューリフィックスはアレルゲンを含まず、副作用もなく、サプリメントとして入手可能であるため、デュシェンヌ型筋ジストロフィーと診断された患者への補助サプリメントとして推奨できるであろう」と述べました。試験結果の確認のために、より長い臨床試験の実施が期待されます。
参考:
- https://www.mdaconference.org/abstract-library/decline-in-muscle-fatigue-score-of-mdx-mice-after-oral-administration-of-neu-refix-beta-13-16-glucans-in-a-short-duration-study-of-45-days/
- https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2667242123000556
- https://www.nature.com/articles/s41598-023-44330-0
- https://www.mdaconference.org/abstract-library/evaluation-of-infiltrating-cd68-macrophages-and-myofiber-cross-sectional-area-in-the-skeletal-muscle-of-mdx-mice-after-oral-administration-of-neu-refi/
- https://www.mdaconference.org/abstract-library/enhanced-muscle-regeneration-in-mdx-duchenne-muscular-dystrophy-mice-proven-by-cd44-myh3-on-consumption-of-a-pullulans-produced-neu-refix-s-glucan/
- https://doi.org/10.1101/2023.04.29.23289260
この研究は、高知県産のベータグルカンとインド・タミルナド州の研究者を結びつけた有限会社ジーエヌコーポレーション(山梨県)がコーディネートしたもので、新技術・新製品の研究開発に対して助成される「令和5年度 やまなしイノベーション創出事業費補助金(研究開発)」の交付を受けました。